長田真作、創作活動について語る

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たぬき 長田さんは絵本作家ですよね。創作活動において、どんなことを意識していますか?

長田 僕と同世代の「創作活動」を仕事にしている人たちって結構、「自分はすごいことをしている! すごいものを生み出している!」って気概をもってますね。いやはや、とっても大きなエネルギーですよ。でも僕の考えでは、何をおっしゃってますか、特別なことをしていると思うのは大間違いだよ、と。血気盛んな若者だのうって思うんです。

長田 寿司職人は寿司を握るとか、大工は建物を建てるとか、そういうようにみんな何かやってるから、「創作活動」の人だけが特別なことをしているという考え方には、「違うでしょう?」って思いますね。むしろ、みんな「創作活動」ですよ。一部が特別じゃない。

 帳簿をつけるとか、事務的な作業とか、そこにも確実に創意工夫があるんですよ。たとえば迅速に作業できるように、「こっちのほうを先にやって、なんならこれとこれを同時にやって」とか、「後ろに電話機置いて、電話しながらやると早いね」とか。日々、いろんなことをするじゃないですか。あと、創意工夫って早く作業することだけじゃないですしね。電話応対の言葉遣いを反省したりとか。反省も創意工夫の一つですよね。

 そこらへんを徹底的に怠けてる僕からすると、世の中、創意工夫に満ちているわけですよ。絵本を描くというのは、多くの人がやらないことだけど……、いやぁ、どーなんですかねぇ、僕の絵本に対する工夫……。うーん、とくにないですねぇ。

たぬき たとえば絵本を描いた後に、もうちょっとここをこうしたら良かったな、とか考えたりしないのですか?

長田 それはね、ときどき気づくけど、考えないようにします。なかったことに、みたいな(笑)。次回作にご期待ください。ははは。

 反省しだすと気になるでしょ? そこで自分の反省から逃げる方法があるんですよ。つまり 「ダメだなって思っている、その自分の考えって、どこから来てるの?」って疑いをもつ「もう一人の自分」を生み出すんですよ。

「あれ? この色じゃなかったとか、ここの線描が……とか言ってるけどさ、あなた。よく見てみ? よーく見てみたら、それがまた味じゃないですか」とか言う奴です。そいつを、反省している自分に勝たせる。

「創作に対する気概とか意志とか意気込みみたいなやつで、あえて問題点を探ってないかい、 君?」

「完璧な作品ができたら次の作品は必要ないんだという考え方に騙されてないか?」

「良いじゃないですか、完璧じゃなくても」

長田 そういうことを平気で言う奴がいたりするんですよ。 多くの人は、そういう奴が浮上してこないと思うんですよね。つねに、自分を甘やかさないようにするとか。「そんな考えじゃ甘い」「プロとしてどうなんだ」とか、とにかく反省を繰り返す人っているでしょ。あれを見るとね、どうやったら、ああなれるんだろうって思うんですよね、 本当に。どうやってその負荷に勝っているんだろう。まあ要は、良いもの作っちゃえば勝てるんだろうけど。たとえば音楽を作る人でも、絵本を作る人でもなんでも、本当に自分の思った通りの作品ができたときに、その負荷がなくなるなんてのは、まあわかっちゃいるんですよ。そういうのはあるだろうなって。

長田 僕ね、自分がどう思っていようが、結果というのはそう変わらないと考えてるんですよ。つまり、すごく意気込みや意志をもって物事に臨んだ末にできあがったものと、意気込まないでできたものって、そう変わらないと思っているんです。(まあ、ちょっとは変わるかもしれないけれど。)だったら楽なほうが良いなっていうのが、僕の考え方です。

 どうやったら楽になるんだろう、もっと楽になるためには、どうしたら良いんだろうって追求している点では、僕はものすごく苦労してますよ。

たぬき ……ありがとうございました。

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