ストレスなく集団生活を送るためには?!

たぬき 引き続き、絵本作家の長田真作さんにお話を伺っております。
(それにしても、徹底的にサボってたとか、なんか、あんまり立派なこと言ってませんね。)

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 そもそも、なぜ堂々とサボっていられるのでしょう?

長田 言葉で表すのはとても難しいですけど、心の深層に「私は大丈夫だ」っていう自信が何かあるんでしょうね。

たぬき サボっていても、人生なんとかなるだろう……みたいな?

長田 自分自身に対して、人生のうちで何かを極めたり、向上したり成長できたらラッキーだな、くらいのことしか思ってません。つまり成長することを自分に強制しているわけではない。自分が良いと思う形に向かって行動することは結構なことですけど、僕の考える「良い形」が、他の人の「良い形」と合わなかったとしても、それは当たり前だなと考えるんです。よく言うやつです。 「根拠のない自信」ってやつですよ……やれやれですね。

 まあ「根拠のない自信」って簡単に言いますけど、「それはなんですか」って質問されても、完全にはわからないんですよね。心理学の先生の分野では、家庭環境とか育ちの環境とかで分析して、ある程度一律の答えを出すんでしょうけど。だってね、根拠が……ないわけだから。

たぬき 根拠がないから、環境も関係ない……?

長田 僕、別に特殊な環境にいたわけじゃないし。もともとある僕自身の性質だと思います。だって誰からも「こういう思考回路でいけば、君みたいな人間になるよ」って教えられてないし。「こうやって、こうやって、こうすれば、立派な社会人になるよ」ってことは、いくらでも聞いてきたんだけど……。いや、聞いてないからこうなったのかな、ははは。

長田 僕、みんなが進学するクラスのなかで、一人、大学に行くのを拒否しました。それは高校に入ってみて集団的なものにストレスがあったから逃げ出したとかじゃなくて、めんどくさかったんです、もう学校という場所は。大学に入る前に、集団から逃げ出したということです。学習なり、やりたいことなりは、自分でなんとかすればいいかなぁ、と。

たぬき 確かに、本気でやれば、なんとかなるかもしれません。

長田 あとね、僕、集団から離れると友達がいなくなるかもしれないっていう恐怖感もないんですよ。そもそも誰しも、いなくなる可能性があるのだから。そのはかなさ、切なさが大切ですよ、なーんてね。

 たとえば他人に対して、裏切っちゃったとか、いろんなことが許せなくなったとか、お互いそういうことはありえますよ、人間ですから。もし僕が普通にしていることに関して、友達が「ああこいつと一緒にいるのはちょっと難しいな」って離れていっても、それは自然消滅ですよね。僕のせいじゃない、みたいなね。まー、そいつを繋ぎ止めたいくらいの友情関係がないのかもしれないけれど、そこで僕は無理して調整しないんでしょうね。

たぬき 長田さんは、あんまり調整しなそうですね。

長田 まあ、さすがに最低限のことは気にしますけどね。ともかく無理して生きていてもしょうがないかな。人が根本のところで何を思ってたり、恨んでたり、慈しんでたりするのかは、わからないから。今、僕のまわりにいる人たちは、そういう僕と付き合っていられるから、本当に奇特な方々ですよ。この場をお借りして感謝です。ありがとうございます。

たぬき (ここで御礼言われてもな……。)
 じゃあ長田さんは、どこの集団にも所属したくない人なんですか?

長田 まあ、僕は決まりきった集団に属したくないだけです。めんどくさいから。集団っていうのは、どこにも存在してるんですよねー。だから居心地の良い集団とか場所を、探しに行ったら良いんですよ。

たぬき (そんなこと、できるかな……。) 

長田 今、思いついたんですけど、こういうのどうです? 1頭の寂しいバッファローが(まあ呑気なバッファローでも、ふざけたバッファローでもいいんですけど)群れから離れていく話。

 群れから離れるって言っても、猛々しく離脱するんじゃないんですよ。猛々しくすると「ライオンキング」みたいになるわけですから。そうじゃなくて、ぶつぶつ呟いたり、ノロノロ動いたり、たいした能力もないくせに、群れに馴染めなくて離れちゃう。それで1頭でいたら、ライオンがやってくる。食われるかと思ったら、このライオンもそうだった、みたいなね。バッファローからしてみれば、群れから離れてダラダラしてた ら、もっとひどい奴がきたって感じです。

ライオン
「悪いけど僕、君を食う力なんてないんだよ……。それにしても君、なんでこんなとこにいるの。」

バッファロー
「いや僕もそうなんですよ……。」

ライオン 
「そうって、もしかしてあなたもアレですか……?」

バッファロー
「ああ。僕の群れとか襲わないの?」

ライオン
「いやあ滅相もない。なぁんで僕、ライオンなんだろうな。気持ちがついていけないんですよね。」

長田 ……って、こういうのが絵本になるんですよ。簡単ですよ、はっはっは。

 今、勝手に話しはじめたけど、もともとそういうアイデアをもってたわけじゃないですよ。まあ、食われる側と食う側なんてストーリーはいっぱいあるし、母とはぐれてとか、仰々しいことをやりたいのが創作者なのかもしれないけど。さすがにバッファローとライオンがそれぞれ逃げあってることって、誰も考えないだろうな。アホすぎて、ね。はっはっは。

たぬき 主人公たちは、何にも立ち向かわず、逃げまくってますからね。

長田 で、ハゲワシも逃げてくる。いろんな動物が逃げて逃げて、そのうちコミュニティができる。それを見てたマサイ族の一人が「これを家族と呼ぶのか」って言ってる。

 でもそのマサイ族の人も、やっぱり逃げてきてるんですよ。だけど人間だから、理性もあるし霊長類だしって気取りがあるから、ちょっと距離をとってるんです。「あれはいかがなものか」って……言える立場じゃないのに。「お前もはぐれ者だろ」って言われる、みたいなね。

たぬき なに格好つけてるんだ、と。

長田 集団とかなんとかって、あんまり深刻に考えるとつまんなくなるけど、今みたいにしたら気楽でしょ。

 群れから外れたバッファローがなぜ戻らないかっていったら、不安じゃないからなのかもしれませんね。野垂れ死ぬこともないだろうっていう楽観主義者だったりとか、いっそ野垂れ死ぬことを美徳に思ってたりして。ちなみに僕は、自分は野垂れ死ぬことがないだろうって思ってるタイプです。

長田 最近耳にしたJ-POPの歌なんですけどね、それは、集団に馴染めないコンプレックスをもってた人が、あるとき自分の存在価値を見つけ始めるって内容の歌詞だったんですよ。それでふと気づいたんですけどねぇー、僕はそもそも、集団に馴染まないこと自体に、コンプレックスがないんですよね。

 コンプレックスって、自分はまわりと比べてダメな人間だって思うほかに、それが翻って、自分は自分で良いんだっていう反動もあるでしょ。僕、その反動もないんですよ。今の歌の話でいうと、反動があるから、そういう歌詞になるし、歌うことで過去の自分と決別するというかね。でもそういう形でコンプレックスを払拭するような趣味は、僕にはないですね。

たぬき そもそも長田さんにとって、集団に馴染まないことは悪いことではないですもんね。

長田 孤独に対する決着とか、個人や個性を大切に……っていうのを、今の世の中、「多様性が大事」って言い方で表そうとしてるでしょ。「みんな違ってみんないい」みたいな言葉がまた使われてるし、それを言う行為自体がもてはやされてる。でも僕からすると、そんなこと前からわかってるじゃんって思いますね。今まで多様性がなかったみたいな使われ方してて(まあ社会制度や全体としては、なかったんだろうけど)。あえて「これからは多様性の時代だ」って謳う行為は、引いた立場から見たら、完全にビジネスでやってることなんだと思いますよ。

長田 ただ、僕の絵本から結果的に、“何か”が読者に伝わってほしいなっていう気持ちもあります。絵本を出したり、いろんなことをしてると、他の人に見てもらうきっかけができるわけでしょう。 世界中の人々に……ね。絵本を読んだ人が、たとえば「あいつは群れから離れても、それを屁とも思ってないな」と読み解くことがあるかもしれない。そういう僕自身の生き方をおもしろがってもらいたいですね。

インタビューその3「長田真作、創作活動について語る!」につづく

※念のために、もう一度長田真作さんのプロフィールを出しておきます

長田真作
 1989年、広島県呉市生まれ。高校卒業後に上京し、障がい児学童保育のNPO法人「わんぱくクラブ育成会」勤務を経て、絵本作家となる。
 ファッションブランドやミュージシャンとのコラボ、渋谷・ヒカリエでの絵本原画個展の開催(2018年1月)など、活動は多岐に渡る。
 著書に『すてきなロウソク』『きらめくリボン』『いてつくボタン』(アカルイセカイ三部作、共和国)、『光と闇と-ルフィとエースとサボの物語-』(集英社)など多数。
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